この記事で解決できる疑問
- クラウド化が進む中、インフラエンジニアとして大丈夫だろうか?
- オンプレミスのスキルが時代遅れにならないか
- クラウドを勉強するとしたら、何がいい?
本記事では、あなたのスキルをどう進化させ、未来のインフラエンジニアとして活躍できるか、その道筋を示します。

記事を最後まで読むことで、あなたの不安は解消されることでしょう。たとえ、オンプレミスの道に残ったとしても、安心して働くことができると思います。
目次
クラウドの台頭でインフラエンジニアのニーズの変化
クラウドの急速な普及により、インフラエンジニアの業務内容や必要なスキルセットが大きく変化しています。従来の物理サーバー管理に加え、自動化やセキュリティ、クラウド設計の専門知識が求められるようになりました。
この項目では、クラウド時代のインフラエンジニアに求められる新たな役割やスキルを5つの視点から解説します。
オンプレミスからクラウド環境への移行支援
インフラエンジニアは、企業がクラウド環境にシステムを移す際の「橋渡し役」として重要です。
クラウド環境では、従来のオンプレミス(自社運用のサーバー)よりもコスト効率や柔軟性が高く、多くの企業がクラウド移行を進めています。詳細な移行計画がなければトラブルが起こる可能性があります。
実際、クラウド移行を検討しているシステム担当者も増えているようです。
クラウドエースは2月14日、オンプレミスでサーバ管理を実施しているシステム担当者 109 名を対象に実施したシステム担当者のサーバ管理に関する実態調査の結果を発表した。
サーバ管理上の課題を質問したところ、「バージョンアップ、セキュリティパッチ適用などの運用管理」が 47.7%、「機密情報や個人情報などの漏えい対策」が43.1%、「運用管理に対応する人がいない」が43.1%という回答となった。
「あなたの会社では、パブリッククラウドへの移行を考えていますか」と質問したところ、「考えている」が52.3%、「考えていない」が38.5%という回答となっている。
引用元:マイナビニュース
クラウドエース株式会社は生成AIサービスの支援などを行っている会社です。オンプレミスで管理している担当者の半分が、クラウド移行を検討しているということですね。
クラウド移行が進む中、インフラエンジニアの「橋渡し」役割としての役割は求められます。
クラウドサービスの運用・管理スキルの習得
インフラエンジニアは、クラウドサービスを使いこなすことで、より効果的なシステム運用を検討していく流れになります。
クラウドサービス(AWS、Azureなど)は、サーバーやネットワークを簡単に作成・管理できる便利なツールですが、正しく運用しなければ不要なコストが発生します。このようなリソース管理を正確に行うスキルが必要です。
また、クラウドサービスはAmazon、Microsoft、Googleが市場を支配しています。総務省の令和6年度情報通信白書にて、以下のような情報もありました。
世界のクラウドインフラサービス2への支出額のシェアは引き続きAmazon、Microsoft、Googleの順に大きく、3社で7割近いシェアを占めている。2023年第4四半期時点でAmazonはおよそ31%、Microsoftは24%、Googleは11%となっており、近年はMicrosoftとGoogleのシェア拡大が目立っている
引用元:総務省「令和6年度情報通信白書」
3社のサービスによって寡占化が進んでいるので、どれか一つのクラウドサービスに特化して、習得するのがベストでしょう。
クラウド時代では、サービスを効率的に運用・管理できるエンジニアが企業のコスト削減と運用効率向上に大きく貢献すると思います。
IaC(Infra Structure as Code)の活用
インフラエンジニアは、コードでインフラを自動化する「IaC」を使いこなすことで、作業効率と信頼性を向上させます。
IaCとは、サーバーやネットワークの設定をプログラムコードで記述し、自動で環境を構築する技術です。従来の手動設定とは異なり、同じ作業を何度でも正確に再現できるため、ミスを予防し、大幅に時間を短縮できます。
以下の引用は、市場調査レポートやコンサルティングサービスを提供するFortune Business Insightsの調査です。
コードとしての世界のインフラストラクチャ市場規模は、2022 年に 7 億 5,910 万米ドルと評価されました。市場は、2023 年の 9 億 870 万米ドルから 2030 年までに 33 億 490 万米ドルに成長すると予測されており、予測期間中に 20.3% の CAGR を示します。
日本円にすると、2022年→2023年で220億円ほど増えたことになりますね。

セキュリティ対策の高度化
クラウド環境では、新しいセキュリティリスクに対応する知識とスキルが、インフラエンジニアに求められます。
クラウドでは、データがインターネット上に保管されるため、ハッキングやデータ漏洩のリスクが懸念されます。特にアクセス権の管理や暗号化の設定を見極めると、機密情報が外部に流出する恐れがあります。
実際、クラウド導入を見送っている会社の主な理由は「セキュリティ不安」です。
クラウドサービスを利用しない理由としては、「必要がない」(45.7%)が最も多く、次いで「情報漏洩などセキュリティに不安がある」(31.8%)、「メリットが分からない、判断できない」(17.8%)が多い
引用元:総務省「令和2年度情報通信白書」
セキュリティ対策に強いインフラエンジニアは、企業のデータを守る最後の砦として欠かせません。
ハイブリッドクラウドやマルチクラウド環境の設計・統合
複数のクラウドやオンプレミス環境を組み合わせて運用する設計スキルが、インフラエンジニアには必要です。
企業によっては、コスト削減やセキュリティ強化のためにクラウドの異なるサービスを利用する場合があります。このような環境では、データの連携や管理が複雑化し、設計・統合のスキルが集中しません。
以下の引用は、市場調査レポートやコンサルティングサービスを提供するFortune Business Insightsの調査です。
世界のマルチクラウド管理市場規模は、2022 年に 70 億米ドルと評価され、2023 年の 86 億 1000 万米ドルから 2030 年までに 500 億 4000 万米ドルに成長すると予測されており、予測期間中に 28.6% の CAGR を示します。
予測では、2030年の市場規模は日本円に換算すると約7兆4000億円となります(1ドル150円で計算)
2023年と比較すると、5倍以上に市場規模が膨れ上がっていて、これは驚異的な成長率と言えるでしょう。
ハイブリッドクラウドやクラウドマルチに対応できるエンジニアは、企業の柔軟なシステム運用を支える重要な役割を担っています。
オンプレミスからクラウド環境への移行に求められるスキル
オンプレミスからクラウド環境への移行は、多くの企業にとって大きな変革です。この移行を成功させるためには、従来のインフラスキルに加えて、新たな技術や知識が必要です。クラウドの設計・運用を効率的に行うために求められるスキルは多岐にわたります。
この項目では、オンプレミスからクラウド環境へのスムーズな移行を実現するために必要な3つの重要スキルを解説します。
クラウドプラットフォームの知識と操作スキル
クラウド環境を活用するためには、AWSやAzureなどのクラウドプラットフォームの知識と操作スキルがおすすめです。
オンプレミスでは、サーバーやストレージを自分たちで物理的に準備しましたが、クラウドではそれがすべてインターネット上で提供されます。そのため、クラウドの操作方法を知らなければ、まるで高性能な家電製品の説明書なしで使うようなものです。無駄なコストや設定ミスがすぐになくなります。
総務省の情報通信白書の統計データによると、世界のクラウドサービスの市場規模は
2020年 | 35兆315億円 |
2021年 | 45兆621億円 |
となっています。
日本の国内の成長率予測も、IDCによると2028年までは平均17.2%となっており、いずれも高い需要があることが分かるかと思います。
プラットフォーム クラウドの知識を身につけることで、効率的なシステム運用が可能となり、企業に大きなメリットを提供できるわけですね。
システム移行計画とプロジェクト管理スキル
オンプレミスからクラウドへの移行を成功させるためには、綿密な移行計画とプロジェクトを進める管理スキルが求められます。
ただ、引っ越し先は「雲の上(クラウド)」であり、荷物(データ)が壊れたり迷子になったりしないように計画を立てる必要があります。システムが我慢して業務に影響が出るため、ダウンタイムを最大限にすることが重要です。
計画と管理スキルを持つエンジニアがいれば、企業は安心してクラウドの移転を進めることができますよ。
セキュリティとコンプライアンス対応スキル
クラウド環境でデータを安全に管理するには、セキュリティと法規制に対応するスキルが重要です。
クラウドでは、データがインターネット上に保存されるため、ハッキングや情報漏洩のリスクが懸念されます。また、法律や規制(例:個人情報保護法)を守らないと罰則を受けることもあります。

セキュリティと法規制に対応できるスキルを持つエンジニアは、クラウド時代において企業の「守護神」みたいなものですね。
クラウド環境でのインフラエンジニアの代表的なキャリアパス
クラウド技術の進展により、インフラエンジニアのキャリアパスも大きく変化しています。従来のオンプレミス環境での運用から、クラウドサービスの設計や運用、セキュリティに至るまで、新たな道が広がっています。
この項目では、クラウド環境で活躍するインフラエンジニアが目指すべき代表的な3つのキャリアパスを紹介し、それぞれの特徴と必要なスキルについて解説します。
クラウドアーキテクト
クラウドアーキテクトは、クラウド環境全体を設計・構築するエキスパートであり、企業が効率的で安全なシステムを運用できるよう支援します。
クラウド環境は、必要なサービスを自由に組み合わせて利用できる「レゴブロック」のようなものです。に応じて最適な構成を設計し、全体の効率性や安全性を確保します。
RightScaleの調査によると、クラウドアーキテクトの人数も増えているようです。
アーキテクトという職業は、エンタープライズアーキテクトやデータアーキテクト、システムアーキテクトなどに細分化される。しかし最近では、クラウドを常に適切な構成に保っておく「クラウドアーキテクト」という新しいアーキテクトも登場してきている。
これはRightScaleが、997人のITプロフェッショナルを対象に実施した調査で明らかにされた要点の1つだ。この調査結果には、クラウドに軸足を置いた企業が登場するなかで、ITマネージャーやプロフェッショナルの役割が変化してきていると記されている。
また、調査ではクラウドアーキテクトの数が増えてきていることも示されている。2018年の調査において、自らをクラウドアーキテクトだと回答したアーキテクトは、2017年の56%から61%に増加している。
引用元:ZDNET japan
アークラウドキテクトは、効率的で安全なシステム設計を行う職人で、企業のクラウド運用を成功に導く重要な役割を担っています。
DevOpsエンジニア
DevOpsエンジニアは、開発チームと運用チームを繋ぐ役割を担い、クラウド環境での効率システム開発と運用を支えます。
従来のシステム開発では、開発と運用が分離しており、連携の遅延が発生することが起こりました。DevOpsエンジニアは、このギャップを見据え「橋」のような存在で、自動化ツールやパイプラインを活用して作業をスムーズに進めるわけですね。
DevOpsエンジニアの需要も増加しています。
世界の開発および運用 (DevOps) 市場規模は、2018 年に 37 億 910 万米ドルと評価され、2026 年までに 149 億 6,960 万米ドルに達すると予測されており、予測期間中に 19.1% の CAGR を示します。
Fortune Business Insightsの予測によると、2026年は日本円換算で約2兆2000億円の市場規模となります。2018年と比較すると、約4倍の成長ですね。
DevOpsエンジニアは、クラウド環境でのスピード感ある開発と運用を実現するために、企業の競争力を高める役割を担っています。
クラウドセキュリティスペシャリスト
クラウドセキュリティスペシャリストは、クラウド環境のデータを守る防御のような存在であり、企業の安全性を確保します。
クラウド環境では、データがインターネット上に保存されるため、ハッキングや情報漏洩のリスクが伴います。このリスクを最小限にするために、アクセス管理やデータ暗号化などのセキュリティ対策が必要です。規制(例:個人情報保護法)への対応も求められます。

クラウドセキュリティスペシャリストは、企業のクラウド環境を安心して利用できる状態にあらかじめ決められた役割を実行します。
インフラエンジニアが学ぶべき唯一のクラウド資格
インフラエンジニアがまず学ぶべきクラウド資格は「AWS認定ソリューション アーキテクト アソシエイト」です。これが、クラウド業界の標準として短期間活用と信頼を得ています。

画像出典元:AWS
AWS(Amazon Web Services)は、クラウドサービス市場で世界トップシェアを誇り(参考文献.1)、多くの企業が採用しています。そのため、この資格はインフラエンジニアにとって「共通言語」また、AWS認定ソリューション アーキテクトは、クラウド環境でシステムを設計・する構築スキルを体系的に学ぶために、初心者から経験者まで幅広い層に対応しています。
日本の求人で、本当にAWSの需要があるのかどうかを、大手求人検索サイト「indeed」で調べてみました。

表にまとめるとこんな感じです。
AWS | 14000件以上 |
Azure | 10000件以上 |
GCP | 6000件以上 |
これらの数字は2025年3月時点ですが、予想通りAWSの需要が最も高いことが分かりました。
インフラエンジニアがクラウドの基礎を学び、実務で活躍するためには「AWS認定ソリューション アーキテクト アソシエイト」が最適です。この資格を取得することで、クラウド時代に求められる標準的なスキルを身につけ、キャリアの幅を広げることができると思います。
ちなみに、オンプレミスを学ぶ代表資格であるCCNAとAWSの違いは、CCNAとAWS、どっちが将来有望?をご覧ください。
大手企業がクラウド導入に慎重になる7つの理由
多くの大手企業はクラウド導入に魅力を感じつつも、慎重な姿勢を取ることが少なくありません。
これには、データセキュリティや既存システムとの互換性、コスト管理、法規制対応、信頼性、運用リスク、社内スキル不足といった複数の要因が影響しています。
この項目では、代表的な7つの理由について詳しく解説し、企業が直面する課題に焦点を当てます。
セキュリティとデータ保護の懸念
大手企業はクラウド導入時、データが外部に保存されるため、セキュリティに対する懸念を持っています。
クラウドを使うと、自社のデータをクラウドプロバイダーのサーバーに預けることになります。これにより、サイバー攻撃やデータ漏洩のリスクが増えると感じる企業が多いです。特に機密情報を扱う企業は、外部のサーバーにデータを預けることに対して慎重です。

大手企業は、クラウドのセキュリティが十分かどうかに慎重になり、導入に際して多くの確認が必要です。
コンプライアンスと法的規制の厳守
クラウド導入にあたり、法的な規制や業界ごとのルールに従わなければならないため、大手企業は慎重に考えます。
特定の国や業界では、データの保存場所や取り扱いに関する厳しい法的規制があります。例えば、データを海外のサーバーに保存することが禁止されている場合、クラウドサービスを利用すると規制違反になる可能性があります。

大手企業は、クラウドサービスが自国の法律や業界の規制を遵守しているか確認し、違反しないかを重視しています。
既存インフラとの統合の困難さ
大手企業では、既存のオンプレミスシステムとクラウドを統合するのが難しいため、導入に時間がかかります。
大手企業は既に大規模なオンプレミス(自社サーバー)やレガシーシステム(古いシステム)を運用していることが多く、それらとクラウドをスムーズに統合するには技術的な難易度が高い場合があります。また、移行にかかるコストや時間も大きな課題です。

クラウド導入には既存システムとの統合が必要ですが、大手企業ではそれが非常に複雑な作業になることが多いため、導入に慎重です。
コスト管理と予測の難しさ
クラウドの従量課金制は便利ですが、使用量が増えるとコストが予想以上に膨らむ可能性があり、企業は慎重に導入を検討します。
クラウドは使った分だけ料金を支払う「従量課金制」が一般的です。このため、予測していた以上にリソースを使ってしまうと、コストが急増することがあります。大手企業は、こうしたコストの不確実性を嫌い、固定費が予測しやすいオンプレミスの方が安心と感じる場合があります。

クラウドは柔軟ですが、使いすぎるとコストが予測できないことがあるため、企業は慎重に導入を考えます。
ベンダーロックインのリスク
特定のクラウドプロバイダーに依存すると、将来的に他のサービスに移行するのが難しくなるリスクがあり、企業はその点を懸念しています。
「ベンダーロックイン」とは、特定のクラウドプロバイダーの技術やサービスに依存しすぎることで、他のプロバイダーに移行する際にコストや時間がかかる状態を指します。一度クラウドに大規模なシステムを構築すると、そのプロバイダーに依存する割合が高くなり、自由に移動できなくなる可能性があります。

クラウドに完全に依存することのリスクを避けるため、企業は慎重にクラウドプロバイダーを選びます。
パフォーマンスの不確実性
クラウド環境でのシステムのパフォーマンスがオンプレミスほど安定しないことを懸念し、大手企業は導入に慎重です。
クラウドは多くのユーザーが共有して使用するため、サーバーの混雑や遅延が発生する可能性があります。特に、リアルタイムでの処理が求められる業務では、クラウドのパフォーマンスが不安定になることが大きなリスクとなります。

クラウドのパフォーマンスが安定しないリスクを避けるため、特に高い安定性が求められる企業ではクラウド導入に慎重です。
内部リソースやスキル不足
クラウド導入には特別な技術や知識が必要で、大手企業でも内部リソースやスキルが不足している場合、導入に慎重になります。
クラウドの運用には特定のスキルセットが必要であり、内部でそのスキルを持つ人材が不足していると、運用管理が難しくなる可能性があります。また、新しい技術を学ぶためのトレーニングや教育にも時間とコストがかかります。

企業内部にクラウド技術を扱えるリソースが不足している場合、導入をためらう原因となります。
まとめ
クラウド技術の進展に伴い、インフラエンジニアの役割も大きく変化しています。従来のオンプレミス環境に加え、クラウドインフラの設計・管理が求められるようになり、技術の幅広い理解とスキルが重要視されています。
これからのインフラエンジニアは、クラウドネイティブな技術や自動化ツールを駆使し、効率的で柔軟なシステム運用を行う能力が必要です。これにより、業務の生産性向上やコスト削減に貢献できる人材が一層求められます。
今後もクラウド化が加速する中、インフラエンジニアにとってクラウドスキルは必須です。変化を恐れず、新たな技術に積極的に取り組むことで、キャリアの幅を広げるチャンスをつかみましょう。
参考文献