この記事で解決できる疑問や悩み
- SES業界の給料事情は?
- SES業界の給料事情を知りたい
- SESの限界を理解したい
この記事では、SES業界で給料が上がりにくいとされる事象について、深く掘り下げて考えていきたいと思います。

記事を最後まで読むことで、SES業界の平均年収や給料を上げる方法、そしてSESにおける年収の限界について、論理的に理解することができるようになると思います。
目次
SESとSIerの平均年収の違い
SES企業とSIer企業では、平均年収に明確な差があります。具体的には、SIer企業の方が平均年収が高い傾向にあります。
以下のランキングは、2024年度3月時点の各企業の最新の有価証券報告書を参考に作成しました。各業種のトップ10企業の平均年収を比較してみましょう。
SES企業トップ10の平均年収
企業名 | 平均年収(万円) |
NSD | 696 |
SIGグループ | 693 |
鈴与シンワート | 652 |
NSW | 621 |
DTS | 612 |
ソルクシーズ | 604 |
富士ソフト | 600 |
コムチュア | 600 |
オプティム | 593 |
フォーカスシステムズ | 570 |
(出典:各企業の有価証券報告書 )
SIer企業トップ10の平均年収
企業名 | 平均年収(万円) |
野村総合研究所 | 1271 |
電通国際情報サービス | 1133 |
三菱総合研究所 | 1080 |
オービック | 1078 |
日立製作所 | 935 |
都築電気 | 914 |
ネットワンシステムズ | 830 |
伊藤忠テクノソリューションズ | 東京証券取引所プライム市場上場廃止したため、データなし |
みずほリサーチ&テクノロジーズ | 未上場のため、データなし |
構造計画研究所 | 2024年7月1日上場のため、データなし |
(出典:各企業の有価証券報告書 )
上記のデータから、SIer企業の平均年収は約850万円から1,200万円と高水準であるのに対し、SES企業の平均年収は約550万円から700万円程度であることがわかります。
この差は、SIer企業が大規模なシステム開発やコンサルティング業務を手掛け、高い付加価値を提供しているため、高収益を上げやすく、その結果として社員の給与にも反映されていると考えられます。
一方、SES企業はクライアント先に技術者を派遣するビジネスモデルであり、収益構造上、SIer企業ほどの高収益を上げにくい傾向があります。
ただし、これはあくまで平均値であり、個々の企業や個人のスキル、経験、役職によって年収は大きく変動します。また、企業の福利厚生や労働環境、キャリアパスなど、給与以外の要素も重要な判断基準となります。
したがって、年収だけでなく、総合的な視点で企業選びをすることが大切です。
両者の違いについては、SESとSier、客先常駐の違いをご覧ください。
SES企業の給料が上がりにくい原因
SES企業では、エンジニアの給料が上がりにくいと言われる背景には、業界特有の構造的な問題があります。下請け構造や営業利益の制約、技術力以外の評価基準が影響していることが多いのです。
この項目では、SES企業の給料が上がりにくい7つの主な原因を解説し、現状を打破するためのヒントをお届けします。自分のキャリアを見直すきっかけにしてください。
中間マージンの存在
SES企業では、給料が上がりにくい理由の一つは「中間マージン」の存在です。
企業はクライアントからエンジニアの派遣料を受け取りますが、その一部を利益として差し引きます。この仕組みがエンジニアの給料に回る金額を少なくしているのです。
例えば、クライアントが1時間1万円を支払っていても、SES企業がそのうち3000円を会社の運営費として取ると、エンジニアには7000円しか支払われません。

このように、中間マージンがある限り、どんなに高い契約を取ってもエンジニアの給料が上がる割合には限界があります。
契約単価が固定化しやすい
SES企業では、契約単価が長期間変わらないため、給料の上昇が難しいです。
契約単価はプロジェクトの初期に決まることが多く、一度決まると数年間据え置かれることがあります。そのため、エンジニアがスキルを磨いても、その価値が反映されないことがよくあります。

この固定化された仕組みが、エンジニアの努力が給料に反映されるのを妨げています。
成果主義が浸透していない
SES企業では、成果主義が浸透しておらず、努力や成果が給料に反映されにくいです。
エンジニア個人の成果よりも、プロジェクト全体の成功が評価されるため、個人が目立つ機会が少ないのです。

成果主義が浸透しない限り、個人の頑張りが給料に結びつくのは難しいです。
ベンチ期間の影響
プロジェクトがない期間(ベンチ期間)のコストが給料の上昇を妨げています。
SES企業は、エンジニアがプロジェクトに参加していない期間も給料を支払わなければなりません。この負担が会社全体の昇給を抑える原因になります。

このコストが増えれば増えるほど、利益が減り、給料に回す余裕がなくなります。
ベンチ期間の影響を抑える仕組みがないと、全社員の給料アップは難しいのです。
スキルアップ支援の不足
SES企業ではスキルアップ支援が不足しているため、給料が上がりにくいです。
教育費をかけない企業が多いため、エンジニアの市場価値が上がらず、高い給料を要求できるようにならないのです。

SES企業の教育不足も同じで、成長の機会を逃しているのです。
教育への投資が少ない企業では、社員の成長も限られ、結果として給料も上がりにくくなります。
キャリアパスの不透明さ
SES企業にはキャリアパスが整備されていないため、昇給の目標が見えにくいです。
「何をすれば給料が上がるのか」が明確でないため、エンジニアが努力の方向性を見失いがちです。

どこに向かえば良いかわからないため、どれだけ進んでも目標にたどり着けません。
キャリアパスが明確でないと、給料を上げるための道筋も見えず、モチベーションが低下してしまいます。
インフラエンジニアのキャリアパスについては、インフラエンジニアのキャリアパスをSESで築く方法を参考にしてください。
エンジニアの代替性
SES企業ではエンジニアが代替可能と見なされるため、給料を上げる必要性が低いです。
特定のスキルを持つエンジニアが多いため、会社にとっては「他の人でも同じ仕事ができる」と考えられがちです。

エンジニアの市場も似たような状態になることがあります。
会社から「替えが効かない」と思われるスキルを身につけない限り、給料アップは難しいでしょう。
以上が、SESで給料が上がりにくい主な原因です。これ以外に「SESはやめとけ」で書いた通り、佐デメリットが存在します。
メリット・デメリットを理解した上で、SESかSierを選ぶかを決めるのがベストだと思います。
SES企業に勤めている人の給料を上げる方法
SES企業で働きながら給料を上げるには、スキルアップやキャリア戦略が重要です。業界特有の制約がある中でも、適切な行動を取れば収入を増やすことは可能です。
この項目では、SES企業に勤める人が給料を上げるための具体的な5つの方法を紹介。今すぐ実践できるヒントを押さえて、より良いキャリアを築きましょう!
市場価値の高い資格を取得する
市場価値の高い資格を取ると、SES企業で給料が上がりやすくなります。
資格を持っていると「この人は特別なスキルを持っている」と判断され、契約単価が上がりやすいからです。
例えば、CCNAやAWS認定資格は、IT業界で「運転免許証」のような役割を持ちます。持っているだけで「安心して仕事を任せられる」と思ってもらえます。
資格を取ることで、クライアントに高い単価で雇ってもらえる可能性が広がります。
資格取得は努力が必要ですが、それが給料アップにつながる確実な方法の一つです。
資格については、下記の記事が参考になると思います。
専門分野を特化させる
自分だけの専門分野を磨くと、給料を上げるチャンスが増えます。
「この人にしかできない」と思われるスキルを持つと、会社やクライアントから必要とされ、単価アップにつながります。
例えば、セキュリティに特化して学び、他の人には解決できないようなトラブルを解決できると、「この人がいないと困る」と思われるようになります。

特化したスキルを持つことで、自分の価値を高めて給料を上げることができます。
直接雇用に切り替える交渉をする
派遣先企業と直接雇用の契約をすることで、給料が上がる可能性があります。
直接雇用になると、中間マージンがなくなるため、クライアントが支払う金額がそのまま給料に反映されやすくなるからです。

エンジニアの場合も、直接雇用されるとその分給料が高くなります。
直接雇用を目指す交渉は簡単ではありませんが、成功すれば大きな給料アップが期待できます。
高単価案件にアサインされるよう交渉する
高単価の案件を担当することで、給料を上げることができます。
クライアントが高いお金を払う案件では、エンジニアの給料も比例して高くなる可能性があるからです。

そのため、自分のスキルを活かせる高単価案件に挑戦することが重要です。
自分のスキルをアピールし、価値の高い案件を担当することで給料アップを目指しましょう。
転職活動を通じて市場価値を確認する
転職活動をすることで、自分の市場価値を知り、給料を上げるチャンスをつかめます。
他の企業と現在の待遇を比較することで、より良い条件で働ける可能性がわかります。また、転職せずとも、今の会社で昇給交渉をする材料になります。

自分の給料も同じで、もっと良い条件を探す努力をすることで、自分に合った選択ができます。
転職活動は自分の価値を確認するための有効な手段であり、結果的に給料アップにつながることがあります。
SES企業の年収の限界は1000万である理由
SES企業に勤める場合、年収の上限が約1000万円になることが多いです。
SES企業の収益構造には、中間マージンや契約単価の制約があるためです。エンジニアがクライアントから高い報酬を得ても、その一部が会社の運営費や利益として差し引かれます。さらに、契約単価自体も業界の相場で限界が決まっています。
たとえば、クライアントがエンジニアに月100万円の単価を支払っていたとしても、SES企業が30%を会社運営の費用として差し引けば、エンジニアに支払われる金額は月70万円程度になります。
このような計算をすると、年間にして約840万円程度が限界に近い報酬となります。仮に非常に高単価の案件を担当したとしても、全額がエンジニアに支払われるわけではありません。

SES企業の収益モデルでは、エンジニアの年収が1000万円を超えることは少なく、それが限界値と考えられます。
年収をさらに増やしたい場合は、自分で事業を立ち上げたり、フリーランスとして直接契約を結ぶなどの道を選ぶ必要があるでしょう。
まとめ
SES企業で給料が上がらない理由には、下請け構造や評価基準の不明確さが影響しています。しかし、スキルアップや資格取得、転職活動などの行動次第で収入を増やすことは可能です。
本記事のポイントを活用し、自身の市場価値を高めていきましょう。
さらに詳しい方法を知りたい方は、他の記事も併せてチェックして、理想のキャリアを実現する一歩を踏み出してください!